2008年8月17日日曜日

毛髪の成長を促す分子をマウスで発見多くの男性、また一部の女性を悩ませる抜け毛のメカニズムの解明に一歩近づいた。毛髪の成長サイクルを開始するよう毛包(もうほう)に伝える重要なシグナリング分子、ラミニン511(laminin-511)が特定されたという。

 米スタンフォード大学医学部(カリフォルニア州)皮膚科学准教授のPeter Marinkovich博士らは、医学誌「Genes & Development(遺伝子&発達)」8月1日号に掲載された報告の中で、この知見がいずれは男性型脱毛症の治療をはじめ、化学療法による脱毛の治療や火傷で失った毛髪の再生にも重要な鍵となるだろうと述べている。

 しかし、米ニューヨークプレスビテリアン病院/ワイルコーネルメディカルセンター(New York Presbyterian Weill Cornell Medical Center)のRonald Crystal博士は、今回の研究はマウスを用いたもので、マウスとヒトとでは体毛も異なると指摘している。

 Crystal氏によると、毛包への複雑な分子シグナルにより、毛包や毛髪の成長や減少が生じるという。同じ研究グループによる過去の研究で、ラミニン511という蛋白(たんぱく)が髪の成長に重要な意味をもつことが示されており、今回の研究ではその理由が明らかにされた。これまでラミニン511は皮膚の外層である上皮で作られ、上皮に作用すると考えられていたが、実際は、上皮で産生されたラミニン511が内層(真皮)に浸透し、毛髪の成長プロセスを促進することが判明した。

 「つまりラミニン511は、“毛髪の成長を開始しましょう”という上皮から真皮へのメッセージで、2層の皮膚の協力と連絡の結果、毛髪が作られる」とMarinkovich氏は述べている。マウスでは、ヒトの妊娠8カ月に相当する時点でラミニン511による毛髪の成長を促すシグナルが認められたが、この作用がその後の時期にも有効であることを期待しているという。

 治療標的としてまず考えられる加齢による男性型脱毛は、毛包がまだあるにもかかわらず髪の成長サイクルが止まってしまうもので、その理由はよくわかっていない。「この知見のヒトへの応用がもちろん期待されるが、毛包や毛包の細胞が過剰に成長してもいけないし、不十分でもいけない。それを制御するオン・オフのシグナルは極めて複雑であり、完全には理解されていない。ヒトへの応用はまだずっと先のこと」とCrystal氏は述べている。

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